pHの測定(JIS K 0101:1998)

pHの測定は,溶液にpHメーターを突っ込めば,測定ができるものではない。
やるべきことをやらないと,正確な測定はできない。
高校生は知らなくともよいが,教える側は知っておくべきだろう。

JIS Z 8802に書いてあるpHの測定の概略はつぎの通り。

準備

使用前にあらかじめ pH メーターの電源を入れておき,検出部は水で繰り返し 3 回以上洗い,きれいなろ紙,脱脂綿などで拭っておく。
ただし,特に汚れている場合には,必要に応じて洗剤,0.1 mol/L 塩酸などで短時間洗い,更に流水で十分に洗う。長く乾燥状態にあったガラス電極は,あらかじめ一夜(例えば,12 時間)水中に浸した後使用する。

校正

pH計の校正は,ゼロ校正とスパン校正とで行う。

pH標準液の種類及び組成

種類 pH(25 ℃) pH標準液の組成
シュウ酸塩
pH 標準液
1.68 0.05 mol/kg 二シュウ酸三水素カリウム水溶液
フタル酸塩
pH 標準液
4.01 0.05 mol/kg フタル酸水素カリウム水溶液
中性リン酸塩 pH 標準液 6.86 0.025 mol/kg リン酸二水素カリウム+
0.025 mol/kg リン酸水素二ナトリウム水溶液
ホウ酸塩
pH 標準液
9.18 0.01 mol/kg 四ホウ酸ナトリウム(ホウ砂)水溶液
炭酸塩
pH 標準液
10.02 0.025 mol/kg 炭酸水素ナトリウム+
0.025 mol/kg 炭酸ナトリウム水溶液
注記 mol/kg は,溶媒 1 kg 中の溶質の物質量を示す質量モル濃度

a)ゼロ校正

ガラス電極を中性りん酸塩 pH 標準液に浸し,pH 標準液の温度に対応する値に調整して校正する。

b)スパン校正

  1. 試料溶液の pH が 7 以下の場合  電極をフタル酸塩 pH 標準液又はシュウ酸塩 pH 標準液に浸し,pH標準液の温度に対応する値に調整して校正する。
  2. 試料溶液の pH が 7 を超える場合  電極をりん酸塩 pH 標準液,ホウ酸塩 pH 標準液又は炭酸塩pH標準液に浸し,その後の操作は1.と同様に行う。
  3. 注記  試料溶液の pH が 11 以上の場合  pH 値が 11 以上のための調製 pH 標準液に準じた溶液として,炭酸塩を含まない 0.1 mol/L 水酸化ナトリウム溶液及び飽和(25  ℃における)水酸化カルシウム溶液を使用することができる。
測定
  1. 校正した pHメーターのガラス電極を水で繰り返し 3 回以上洗い,きれいな柔らかい紙などでぬぐう。
  2. 試料をビーカーにとり電極を浸す。温度補償機能があるときは,温度(1)を合わせた後 pH を測定する。
  3. 電極を取り出し,水で繰り返し 3 回以上洗い,きれいな柔らかい紙などでぬぐう。
  4. 再び試料をビーカーにとり電極を浸し,pH 値を測定する(1)
  5. 再び3.及び4.の操作を行って 3 回の測定値が±0.1(2)で一致した測定値を平均して試料の pH 値を算出する。
    (1) pH 値は試料の温度によって異なるので,試料の温度変動は±2℃とする。
    注(2)  緩衝性の低い試料は,容易に pH 値が変化するため,pH 値が±0.1 の繰返し性が得られない場合がある。この場合は,pH 値が±0.2 で一致する値を平均して pH 値を算出する。また,大気中の二酸化炭素で容易に pH 値が変動する場合には,流液形の電極を使用するとよい。
  6. pH11以上の測定
    pH11以上の測定はしない方がよい。でも,測定をするときは,つぎのようにする。
    溶解性の低いガラス膜をもった電極,すなわち,高アルカリ電極を用いる。このような電極は,水の測定全般にわたってその使用を勧める。参照電極は,すり合わせスリーブ形で,電解液は塩化カリウム溶液(1 mol/L)を用いる。ガラス電極への塩化カリウムの影響を避けるため溶液を静かにかき混ぜる。空気の影響を避けるためには,試料を測定容器に流す。静電効果を抑制するために,測定容器部分を電磁遮蔽し,試験液中に金属電極を挿入し,接地しなければならない。
    備考. pH 11以上で,特にアルカリ金属元素の濃度が高い場合には,アルカリ誤差を生じやすい。アルカリ誤差の少ない電極(例えば,リチウム電極など)を用い,炭酸塩を含まない0.1mol/L NaOH又は25℃の飽和Ca(OH)2を用いてpH 計の校正する。ただし,0.1mol/L NaOHや飽和Ca(OH)2は,大気中の二酸化炭素を吸収して容易に pH が低下するので使用時に調製する。

HORIBAのサイトでは,より正確に測定をするときの注意事項に次のものを挙げている。

  1. 電極内部液に気泡があれば、電極を振るなどして取り除く。
  2. 電極表面に気泡がついていれば取り除く。
  3. 校正液や試料の液温を一定に保つ。
  4. 測定容器は密閉のできるものを用いる(外気からの影響を防ぐため)。
  5. 測定容器は純水で洗浄した後、試料で共洗いする。
  6. 測定中は試料をゆっくり攪拌する(300 rpm程度)。
  7. あらかじめ電極を試料に浸し、馴染ませておく。
保管

3 mol/L KCl水溶液に浸けて保管。
純水保管はしない。
詳しくはこちら。

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