pHを測定する実験では,pHメーターの校正をしなければならない。
そのときに必要になるのは,pH標準液である。
購入すれば溶液調製しなくてもよいが,
高校の実験では,大量に使用するときもあるので
調製法を知っておいた方がよい。
溶液の調製方法は,JIS K 0101によると概略は次の通り。
(1) 水の作り方(炭酸を含まない水)
JIS K 0557 の A2〜A3 の水をフラスコに入れ,約5分間沸騰させて溶存気体及び炭酸を除去する。ガス洗浄瓶にKOH溶液(250 g/L)を入れ,空気中の二酸化炭素を遮断して放冷する。
JIS K0557 : 1998 用水・排水の試験に用いる水
項目 | 種別及び質 | |||
---|---|---|---|---|
A1 | A2 | A3 | A4 | |
電気伝導率 mS/m (25 ℃) | 0.5以下 | 0.1以下(1)(2) | 0.1以下(1) | 0.1以下(1) |
比抵抗 MΩcm(25 ℃) | 0.2以上 | 1以上 | 1以上 | 1以上 |
全有機体炭素 mg/L | 1以下 | 0.5以下 | 0.2以下 | 0.05以下 |
亜鉛 µg/L | 0.5以下 | 0.5以下 | 0.1以下 | 0.1以下 |
シリカ µg/L | – | 50以下 | 5.0以下 | 2.5以下 |
塩化物イオン µg/L | 10以下 | 2以下 | 1以下 | 1以下 |
硫酸イオン µg/L | 10以下 | 2以下 | 1以下 | 1以下 |
注1: 水精製装置の出口水を、電気伝導率計の検出部に直接導入して測定したときの値。
注2: 最終工程のイオン交換装置の出口に精密ろ過器などのろ過器を直接接続し、出口水を電気伝導率計の検出部に直接導入した場合には、0.01 mS/m(25 ℃)以下とする。
(2) pH 標準液
- シュウ酸塩 pH 標準液 (pH1.68)
①二シュウ酸三水素カリウム二水和物KH3(C2O4)2・2H2Oをめのう乳鉢ですりつぶし,デシケーター中に 18 時間以上保存する。
②①の 12.71 g を少量の水に溶かし,全量フラスコ 1000 mL に移し入れ,水を標線まで加える。
③共栓ポリエチレン瓶又は共栓ホウケイ酸酸ガラス瓶に入れて保存する。 - フタル酸塩 pH 標準液(pH4.01)
①フタル酸水素カリウムo-C6H4(COOK)(COOH)を 120 ℃で約1 時間加熱し,デシケーター中で放冷。
②①の 10.21 g をとり,少量の水に溶かし,全量フラスコ 1000 mL に移し入れ,水を標線まで加える。
③共栓ポリエチレン瓶又は共栓ホウケイ酸ガラス瓶に入れて保存する。 - 中性リン酸塩 pH 標準液(pH6.86)
①リン酸二水素カリウムKH2PO4を 105±2 ℃で 2 時間,リン酸水素二ナトリウムNa2HPO4は 110℃で 2 時間それぞれ加熱し,デシケーター中で放冷。
②①のリン酸二水素カリウム 3.40 g と,そのリン酸水素二ナトリウム 3.55 g とをとり,少量の水に溶かし,全量フラスコ 1000 mL に移し入れ,水を標線まで加える。
③共栓ポリエチレン瓶又は共栓ホウケイ酸ガラス瓶に入れて保存する。 - ホウ酸塩 pH 標準液(pH9.18)
①四ホウ酸ナトリウム十水和物Na2B4O7・10H2Oをめのう乳鉢ですりつぶし,臭化ナトリウム溶液(飽和)に,更に JIS K 8514 に規定するKBrを加えた溶液を入れたデシケーター中に放置して恒量化する。
②①の 3.81 g をとり,水に溶かし,全量フラスコ 1000 mL に移し入れ,水を標線まで加える。
③共栓ポリエチレン瓶又は共栓ホウケイ酸ガラス瓶に一杯に満たした状態にして保存する。 - 炭酸塩 pH 標準液(pH10.02)
①炭酸水素ナトリウムNaHCO3をデシケーター中で約 3 時間放置し,
②炭酸ナトリウムNa2CO3をあらかじめ白金るつぼに入れ,600℃で加熱して恒量化する。
③①の 2.10 g をとり,②の 2.65 g をとる。両者を少量の炭酸を含まない水に溶かし,全量フラスコ 1000 mL に移し入れ,水を標線まで加える。
④共栓ポリエチレン瓶又は共栓ホウケイ酸ガラス瓶に入れ,JIS K 8603 に規定するソーダ石灰又は JIS K 8574 に規定するKOHなどを入れたデシケーター中に保存する。
表 調整 pH 標準液の各温度における pH 値
温度℃ | シュウ酸塩 | フタル酸塩 | 中性リン酸塩 | ほう酸塩 | 炭酸塩(*) |
0 | 1.67 | 4.01 | 6.98 | 9.46 | 10.32 |
5 | 1.67 | 4.01 | 6.95 | 9.39 | (10.25) |
10 | 1.67 | 4.00 | 6.92 | 9.33 | 10.18 |
15 | 1.67 | 4.00 | 6.90 | 9.27 | (10.12) |
20 | 1.68 | 4.00 | 6.88 | 9.22 | (10.07) |
25 | 1.68 | 4.01 | 6.86 | 9.18 | 10.02 |
30 | 1.69 | 4.01 | 6.85 | 9.14 | (9.97) |
35 | 1.69 | 4.02 | 6.84 | 9.10 | (9.93) |
40 | 1.70 | 4.03 | 6.84 | 9.07 | − |
注(*) 括弧内の値は,2 次補間値を示す。
備考
- 表に記載されていない温度における pH 値は,補間して求める。
- 各 pH 標準液は,保存中に pH 値が変化することがあるので長期間保存したものは使用しない。特にホウ酸塩 pH 標準液及び炭酸塩 pH 標準液は,容易に大気中の二酸化炭素を吸収し pH 値が低下するので注意する。
- 各 pH 標準液は,一度使用したもの及び大気中に開放して放置したものは使用しない。